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初めての緊急事態宣言が発出されてからまもなく1年。

新型コロナウイルス感染症予防のためのワクチンの接種が医療従事者に対して始まるなど、人類対ウイルスの戦いは新たな局面を迎えています。

一方で種々の変異株が確認され、開発されたワクチンの有効性が再検証されるなどの不安要素もあります。
専門家の中には、2021年中の収束は困難であるという見解を示す人もいます。
まだ外出自粛を求める自治体もあり、在宅時間が長い方もいらっしゃるのではないでしょうか。

前回、前々回とおうちトレーニングの方法についてご紹介してきました。
適度に体を動かし、健康を維持増進しようというものでしたね。
今回は少し視点を変えて、身体の内側から身体機能を高めるボディーワークについてお話します。

☆ソマティックスの3大メソッド☆

「ソマティックス(Somatics)」という言葉を聞いたことがありますか?

ソマティックスとは、内側の身体的知覚や経験を強調するボディーワークや運動学習の学問分野のことを指します。

簡単に言えば、自分自身の感覚を頼りにして、身体機能を高めるアプローチと考えてもらえばいいと思います。

例えば、バレエやダンスでは、通常外部から(客観的に)指先まで伸びている、しなやかな動きといったことを評価しますが、ソマティックスでは内部から(主観的に)各動作の感覚を評価します。

この分野の有名な方法として、

・アレクサンダー・テクニーク
・フェルデンクライス・メソッド
・ロルフメソッド

の3つが挙げられます。

一般的にはあまり馴染みのない方法だと思うので、この3つの方法を具体的にご紹介していきます。

☆アレクサンダー・テクニーク☆

アレクサンダー・テクニークは、心身を「緊張」から解放して、パフォーマンスを最大限発揮できるようにしようとする方法です。

創始者であるアレクサンダー氏は、自身の俳優としての経験の中で、緊張による心身の硬直が原因で声が出づらいことに悩まされたことから、これを解決するためにアレクサンダー・テクニークを考案したとされています。

楽器の演奏者やスポーツ選手などにおいては取り入れている方も多い方法です。

もちろん演奏者やスポーツ選手のパフォーマンスに良いというだけではなく、日常生活においても緊張からくる体調不良を改善することが期待できます。

アレクサンダー・テクニークの特徴は、頭と首と胴体の関係性を重視し、無意識のうちに身についてしまった身体のクセを、本来あるべき「自然体」に戻すアプローチをとるところにあります。

もう少し詳しく説明すると、本来行いたい動作が身体のクセ(不要な動作)によって妨害されるため、そのクセを抑制することで、人間が本来持っているプライマリーコントロール(初源的調整作用)が発揮され、最大限のパフォーマンスを引き出すことができるという考え方をするのです。

アレクサンダー・テクニークを習得すれば、心身の緊張状態を解消することができるため、身体の痛みや不調を改善したり、姿勢が自然体を取り戻したり、心理的に楽になったりといった効果が望めます。

ただし、無意識的な身体のクセというものは、自分自身や知識のない人が見ても探し当てることは難しいものです。

そのため、専門的な知識を持つ人が、客観的視点から言葉や動作補助によりサポートして、心身のズレに気づきを与え調整を行い、徐々に主観的視点からも調整していけるように適応していくように進めていくのが良いでしょう。

☆フェルデンクライス・メソッド☆

フェルデンクライス・メソッドは、脳と身体をつなぐ神経ネットワークのコミュニケーションを増加させることにより、身体機能を向上させようとする方法です。

普段無意識で行っている身体の動きや感覚を意識的に観察して、少しずつ新しい動きを取り入れそれを繰り返すことで、多様な動きや感覚を養い、より高いパフォーマンスを発揮できるようになります。

ゆっくりとした簡単な動きで、脳の運動中枢を刺激し、脳と筋肉の間の大切な情報の流れを引き起こす、新たな情報の流れを築き上げるのですね。

例えば、自転車の補助輪を外す練習をしているときを考えてみましょう。

補助輪があるときは、左右に倒れそうになっても補助輪が転倒を防止してくれるので、ペダルを漕ぐこととハンドルを操作することを身体が覚えれば、乗りこなすことができます。

しかし補助輪を外すと、左右に倒れそうになったら身体が中心に戻すという新たな動きが必要になってきます。

最初のうちは上手くできずに転倒してしまいますが、何度も何度も繰り返して行う(脳と身体をつなぐ神経ネットワークのコミュニケーションを増加させる)ことで、補助輪なしで自転車に乗る動きを習得していくのです。

このような自然な試行錯誤のプロセスを通して、自身の運動感覚の学習を行うことによって、より無駄のない動きや洗練された動きになってきます。

フェルデンクライス・メソッドの効果は、効率的な身体の使い方を習得できるだけではなく、身体の痛みや緊張を緩和できたり、リフレッシュできたりといったことにも及びます。

また、最小限の力で効率的に動く方法であるため、ケガや痛みを抱えている人でも行うことができます。

そしてもう一つフェルデンクライス・メソッドの大きな特徴は、人の動きのマネをするのではなく、あくまでも自分自身の「感覚」を頼りに動きの習得を目指すことです。

これは身体の大きさ、筋肉の付き方、動きのクセは人それぞれであり、最適な動きは人によって異なるという考え方に基づいています。

おうちトレーニングでご紹介したトレーニングが筋肉を鍛えるものだとすれば、フェルデンクライス・メソッドは神経を鍛えるものだと言えるでしょう。

筋肉を使わない動き、つまり神経を使った動きは運動感覚の学習や身体機能の向上に役立つのです。

「柔よく剛を制す」という武道の精神に似ていると思いませんか?

実は、フェルデンクライス・メソッドの創始者であるフェルデンクライスは、柔道生みの親嘉納治五郎から柔道を学び、その柔道の身体の知恵を発展させて、フェルデンクライス・メソッドを築き上げたと言われています。

とても日本に馴染み深い方法なんですね。

☆ロルフメソッド☆

ロルフメソッドとは、ストラクチュラル・インテグレーション、つまり身体構造統合法のことで、身体のクセや歪みを改善するとともに、身体の構造や使い方を学習するという方法です。

ロルフメソッドの大きな特徴は、「筋膜」に着目している点にあります。

近年、日本でも筋膜リリースという言葉を耳にする機会も増えてきましたよね。

筋膜とは、その名のとおり筋肉を包んでいる膜のことで、身体のクセや姿勢等によって周辺の筋肉や皮膚に癒着して固くなってしまいます。

これにより身体に何らかの不調をきたしてしまうため、この癒着を解こうというのが筋膜リリースです。

ロルフメソッドはこのような筋膜リリースだけではなく、筋膜を伸ばしたり広げたりして本来あるべき場所に戻す、身体の構造をより良い形にすることを目的としています。

この目的を果たすために、手技によって筋膜にアプローチして、身体のバランスを調整します。

ここで注意したいのが、重視しているのは手技によって刺激を加える一部分というよりむしろ全体との関係性であるということです。

例えば腰が痛いという症状を抱えていた場合、腰に対して手技を施せばいいということはなく、お腹や脚に対する手技、立ち方や座り方のクセを改善することで解消されることが少なくないのです。

ロルフメソッドは個体差に依拠した方法であるため、柔軟性が増して身体が軽くなったり、身体のバランス感覚良くなったり、身長が伸びてスリムになったりといった身体的なものから、トラウマから解放されたり、自信が湧いてきたり、やる気があふれてきたりといった心理的なものまで様々な効果が現れる場合があります。

大切なことは、ロルフメソッドは絶えず重力がかかる地球上において、その影響で身体のバランスが崩れてしまう、それを改善するために身体の各部位のバランスを前後左右、上下、内外に整えることで、重力がかかる垂直方向に正しく整列させる方法であり、その効果は身体的なものから心理的なものまで広範にわたるということです。

☆自分の感覚を研ぎ澄ませよう☆

「緊張」から解き放ち最大限のパフォーマンスを引き出すアレクサンダー・テクニーク、「感覚」を研ぎ澄まし効率的な身体の使い方を体得するフェルデンクライス・メソッド、「筋膜」を最適な場所に配置し身体のバランスを調整するロルフメソッドをご紹介してきました。

近年、日本では「ゼロトレ」(石村友見著)という本がベストセラーになりました。

このゼロトレも身体の各部位を本来あるべきポジション、つまりゼロポジションに戻すことで、ダイエットや身体の不調改善をしようという方法です。

現代では、パソコンやスマートフォンの普及に伴い、長時間「不自然な」姿勢でいることが多くなり、身体の状態が本来あるべきものとは異なった状態であることが少なくありません。

腰や肩、首が凝ったり痛みが生じたりしている、偏頭痛がする、倦怠感がある…

このような身体の不調は、身体が悲鳴を上げているシグナルです。

無意識のうちについてしまった身体のクセ、それを意識に上げて改善しようという取り組みはとても大切なのです。

パソコンやスマートフォンを操作するときに猫背になっていませんか?
立っているときに片足に重心を乗せて、片足立ちしていませんか?
長時間脚を組んで座っていませんか?

日頃行っている所作を振り返って、身体のクセを増進しないようにしましょう。

そして、身についてしまった身体のクセを改善するために、ボディーワークを取り入れてみましょう。

最後までお読みいただきありがとうございました。